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我々が気づかないうちに日本は戦争のできる国へと大きく変わろうとしている。ゆっくりでなく、急速に。
安倍総理は「戦後レジームからの脱却」を政策の旗印として再登場した。戦後レジームはサンフランシスコ講和条約が1952年に発効し、日本が独立した後の日本の政治体制を指す。サンフランシスコ講和条約の下で独立を果たした日本の独立は完全なものではなかった。日本が得た独立は米国に従属するものであった。
安陪総理の真意は日本を米国に従属しない国、米国と平等な独立国にすることであろう。これは米国にとっては穏やかではない体制である。日本と同じ敗戦国であるドイツは、英仏米露4カ国による占領、東西ドイツに分断、東西ドイツの再統一を経て、どの国にも従属しない関係を築くことに成功している。安陪総理はドイツのようになることを念頭においているのであろうか。
過去1年間の安倍政権の動きを見る限り「戦前レジームへの回帰」を目指しているようだ。戦前の日本は中国や米国を相手に戦争をする国であった。安陪政権は海外で戦争ができる国を目指しているように思う。「戦前レジームへの回帰」では余りにも露骨なので「戦後レジームからの脱却」と言い換えたのかもしれない。
「戦後レジームからの脱却」の表現をソフトにしたものが「積極的平和主義」である。人々が好む、耳当たりの良い「平和」という言葉を使っているが、その実態は我々が通常考える平和とは全く異なる。その本質は積極的に武力を使い平和を得ること。平和を得るために戦争をいとわない主義である。平和のための戦争は第一次世界大戦のキャッチフレーズであったことを忘れてはならない。安陪政権は、日本を世界のどこでも軍事力を行使することができる国にするための手を着々とうっている。
太平洋戦争前の日本が目指した戦前レジームは富国強兵であり、武力によって欧米の列強(覇権国家)と対等に渡り合うことであった。現在の覇権国家は核保有国の米露中英仏などである。安陪政権が想定する当面の相手国は中国であろう。しかし、武力というハードパワーによって中国と対等に渡り合うことができるというのは幻想である。両国の経済力と人口から考えて日本が武力で中国に対抗することは無理である。
ここで、日中両国の経済力を比較してみよう。図1は日本と中国の名目GDP(米ドルで評価)の推移である。2015年より先は中国の成長率を7%、日本の成長率を2%と仮定して推測した。
2009年に中国は日本を追い越した。中国のGDPは2014年に日本の2.2倍まで増加。今後、中国が年率7%で成長すれば5年後の2020年に中国のGDPは日本の3倍になる。メディアはGDPを絶対値でなく成長率で報道することが多いため実態を見失しなってしまう。中国経済が減速したと言っても成長率が7%もある。中国元と米ドルの交換レートが是正されて元高になれば名目GDPはもっと大きくなる。中国の将来を過小評価してはいけない。
図1 日本と中国のGDPの推移と推測 世界経済のネタ帳からデータを得た |
2020年頃に中国は日本の3倍の経済力を持つ。軍事費がGDPに比例すると単純に仮定すれば、2020年の中国の軍事予算は2014年予算の1.5倍、他方、日本の予算は現状からの微増であろう。2014年の時点で中国の軍事費は日本よりもずっと多いはずであり、その1.5倍は巨大である。中国は米国を追いつくことを目標に軍拡を進めている。とにかく、経済力が3倍の国と対等な軍備競争ができるはずがないし、軍備競争することは愚かと言える。
そうならば、日本はどうすれば良いのか。軍事力というハードパワーで勝負にならないならばソフトパワーで行けばよい。しかし、残念なことにソフトパワーという日本ブランドにかつての輝きがなくなっている。その証拠はISに拘束された2人の日本人が殺害されたことに見る事ができる。ソフトパワーの日本ブランドを復活させ、さらに進化させることは容易ではないが、それを目指さない限り日本の未来は暗いと思う。
まずは、アジア、特に、中国と韓国との友好関係を復活させ、強化することが肝心である。友好は武器・弾薬よりもずっと費用が安い。それにも関わらず、「国家の暴走(古賀茂明著、角川oneテーマ21)」の中で著者は「積極的平和主義」を達成するために、安陪政権は集団的自衛権を筆頭に13本の政策を用意しており、仕上げの13番目が核武装であると指摘している。さもありなん。
日本と中国のGDPの推移 世界経済のネタ帳
http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=NGDPD&c1=CN&c2=JP